東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部

プロジェクト

ビーコンとアプリ(慈恵Here)を活用した「医師の働き方改革プロジェクト」についての取り組み

2022.02.01
働き方改革
医師の長時間勤務は国内外で社会問題化しており、持続可能な医療を提供していくためには対策が急務です。東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部では、2018年からビーコンを活用した医師の勤務状態のデジタル化と勤務管理に取り組んでいます。
業務用スマートフォンで検知する病院建物内の位置情報を自動的に記録することで、在院時間を見える化することで、労務改善のための基礎資料を提供し、労働者(医師)と経営者(病院管理者)の両方を守ることを目指します。

医師の長時間勤務は国内外で社会問題化しており、持続可能な医療を提供していくためには対策が急務です。日本においても労働基準法が改正され2024年4月から医師の労働時間について実効的な規制が行われる予定となっています。これにあわせて厚生労働省の検討会では以下のような見通しが立てられており、労務管理に関して継続的な計画立案とPDCAが求められています。

図 厚生労働省 医師の働き方改革の推進に関する検討会資料より 抜粋

東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部では、2018年からビーコンを活用した医師の勤務状態のデジタル化と勤務管理に取り組んできました。
院内に設置したビーコンからの信号を業務用スマートフォンで検知し、病院建物内の位置情報を自動的に記録します。常に持ち歩くスマートフォンを活用することで、客観的なデータが継続的に、しかも医師の負担がなく取得可能となります。

物事を改善するためには、まず測定可能でなければなりません。
在院時間を見える化することで、労務改善のための基礎資料を提供し、労働者(医師)と経営者(病院管理者)の両方を守ることを目指します。

図 ビーコンを用いた勤怠記録システムの概要

  • 何故ビーコンを?
    位置情報を取得するためのツールとしてはGPSもありますが、ビーコンを選択しています。この理由は、①業務外(病院外)の記録をできないようにしプライバシーを確保すること、②スマートフォンの消費電力が一般にGPSよりもビーコンのBluetoothで小さいこと、③平面地図上で同じ点で示されるフロアの違いを検出できること、などがあげられます。
  • 自動的な記録が本当に必要?
    そもそも医師の働き方改革を進める為には、まず医師の“在院時間の実態を知る”という事から始まります。各医療機関ではタイムカード等を使用して医師が勤務時間の報告を行うケースが多いと思いますが、応召義務等の様々な事情で必ずしも実態を反映できていない場合もある為、人の手を介さない実際の在院時間データを自動で収集する事が重要です。

本学でのプロジェクト概要
1.院内の全ての出入り口にビーコンを設置(2021年4月時点でのべ150個を設置)。医師が院内の出入り口を通過すると自動でデータ送信
2.ビーコンが発信するBluetoothのIDを検知して、アプリがデータを自動送信。(アプリが非起動状態でも可)
3.医師端末へのアプリ(慈恵Here)インストール後、職員番号を登録すると在院時間がデータ化。必要なタイミングで勤務実態データを提出。

共同研究パートナー
株式会社ビーキャップ(https://www.beacapp.co.jp/
ビーコンを活用した医師の勤務状態のデジタル化(在院時間の自動データ化)と勤務管理の実証(共同研究)

今後について
データの見える化は重要ですが、そのデータから「課題」を見つけ「原因」を特定し、それを「解決」する事こそが、業務改善つまり“働き方改革”へと繋がります。
当学では既にプロジェクト概要の1~3の実証を終えており、今後は運用フェーズの中で更なるデータの精度向上や勤怠管理に関する機能拡張を進めていく予定です。
最後に、本プロジェクトについては、当部が運営している“デジタルヘルス解説集”というデジタルヘルスの情報整理や今後の在り方についてまとめているサイトでも、紹介しておりますので、ご興味がある方はそちらも是非ご覧ください。