東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部

プロジェクト

医療機器の開発支援と医療の効率化に関する取り組み

2022.02.04
医療機器開発
医療機器では品質管理、有効性の確認など様々な規制があり、開発するうえではハードルを理解してマネジメントしていくことが必要です。また、医療現場へ安定的に共有するためには規制をクリアするのみならず、適正な収益を獲得することが重要です。医療財政が圧迫される中で、新しい医療機器や技術へ積極的に大きな支出をすることは難しくなってきており、既存医療費を削減する取り組みが望まれます。東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部では、深い知見をもつメンバーで医療を取り巻く変化に柔軟に対応しながら、社会に定着する医療機器開発やその支援を行っていきます。

疾病の診断・治療・予防に使用するために使用する器具や機械は「医療機器」と呼ばれ国からの規制を受けています。規制の中では、不良品が混じらないように品質の管理、効果のない機器が販売されないように有効性の確認、データの捏造がないか調べる信頼性の確認など様々な側面があります。新しい治療を提供するためのアイデアを形にして、医療機器として世の中に出していくためには、これらのハードルを理解してマネジメントしていくことが必要です。
また、医療機器は規制をクリアして終わりではなく、企業が開発製品により適正な収益を稼げなければ医療現場へ供給の維持ができません。日本は国民皆保険制度をとっており、病院での医療サービスに対しては保険制度で定められた公定価格(診療報酬)が支払われ、その一部が企業に対価として支払われます。新しい医療機器や医療技術に対してどのような価格をつけるべきか、原価や類似品の価格、既存治療でのコスト、既存治療と比べた改善点など一定のルールに従って議論がされ、診療報酬が決定されます。使用者に制限をかける必要がある場合には、特定の施設のみで使用が可能となるよう施設基準が設定されることもあります。価格決定のルールを把握しておくことは製品開発の出口戦略として極めて重要です。

東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部では、医療機器の規制を行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)と医療機器や医療技術の価格決定を行う厚生労働省の経験をもつメンバーが所属しており、数百品目の審査経験をもとに医療機器開発の支援を行っています。

日本を含む先進国では高齢化が進むと同時に、高度な(すなわち値段の高い)医療が利用可能となり、医療財政が圧迫されています。開発側の立場からは、高い診療報酬を獲得して大きなリターンを得たい気持ちが大きいですが、現行の限られた予算の中で国民皆保険制度を維持する立場からは新しい製品に対して簡単に高い診療報酬をつけることはできません。これを解決する1つの手段として、既存治療で効果のないものをやめて、そこで浮いたお金を新しい医療機器や技術の開発インセンティブに当てることが考えられます。また、ITをつかった効率化により人がやるよりもコストが下がる仕事を移管していく方法もあります。
受益者負担を考えると、診療報酬の中で支払われる医療サービスは国民・患者へ還元されるものでなければなりません。医療機器でもITでも、だれからお金をもらうつもりで、そのためにはどのような準備が必要なのか、ビジネスとして成立させるためのプロジェクトが進行中です。

これまでの成果である医療機器プログラム「Join」でのチャレンジのように、医療を取り巻く変化に柔軟に対応しながら、社会に定着する医療機器開発やその支援を行っていきます。